前の記事で、「障がいには身体障がい、精神障がい、知的障がいがある」と簡単に述べましたが、この中で精神障がいと知的障がいの違いがわからない人は大変多いです。
どちらも併せて障がいを持つ子が多くいるため、「これは精神障がいの特徴」「あれは知的障がいの特徴」とその子の言動を見て理解できる人は、専門家か身近に障がい児を持つ方くらいでしょう。
私も実際親になるまではそれらの違いは知りませんでした。
今回は、知的障がいと精神障がいの違いについてご説明いたします。
知的障がいは知的機能の障がい
知的障がいとは、主に知的機能に関する困難をいいます。
例えば、幼児期にわかりやすいものの代表に「言葉の発達がゆっくり」というものがあります。
知的障がいを持つ子は、言葉の発達がゆっくりで、言語でのコミュニケーションが小学校入学後も難しいケースが多いです。
どの程度の遅れかはその子によって違いますが、小学校のうちに簡単なコミュニケーションなら取れる子もいれば、大人になってからも言語でのやりとりが難しいという人もいます。
それ以外にも、文章を理解するのが難しい、簡単な計算が難しいなど、日常生活に困難を伴うような機能の障がいが現れるのが知的障がいです。
簡単な計算というのは、例えばお会計の時にお金の計算ができないといったものです。
知的障がいの原因
知的障がいは様々な要因によって生じるといわれており、原因のすべてが解明されているわけではありません。
さらに知的障がいは、出生前から決まっているとも限らず、後天的な要因で障がいが生じることもあるのです。
では知的障がいが生じるにはどのような原因があるのか、詳しくご説明いたします。
主に「出生前の要因」「周産期の要因」「生理的の要因」の3つに分かれるので、それぞれ説明していきますね。
出生前の要因
出生前に知的障がいを発症する要因の中には、遺伝子や染色体の異常といった要因があります。
こういった突然変異による知的障がいの発症は、誰にでも起こり得るもので、遺伝性のものではありません。
もう一つ出生前の要因として、母親が妊娠中に感染症にかかったり、胎児に影響のある薬を服用したり、アルコールが原因となることもあります。
また、母体がけがを負うなどの外的要因も知的障がいの要因となると考えられているため、妊娠中の生活は胎児に深く関わるのだと考えていいでしょう。
周産期の要因
出生前後の周産期にも要因となる事柄はいくつかあります。
早産時は体が未熟なだけではなく、脳に障がいが残ることもあり、これにより知的障がいが生じる可能性があるのです。
また、早産ではなかったにしても分娩時に何らかのトラブルなどがあり、赤ちゃんの体に負荷がかかった、けがを負うことがあったという場合に知的障がいの要因となる可能性もあります。
例えば出産時にへその緒が首に巻き付いており、外れるまでに時間がかかっていたという場合は、何事もなく成長することもあれば、知的障がい、身体障がいなど、どこかに障がいを残す可能性もあるのです。
また、妊娠高血圧腎症やその他の合併症も要因となると考えられます。
生理的要因
上記に述べた一切に心当たりがなく、それでも発達の遅れを指摘された場合は、乳児期や幼児期に必要な栄養が足りていなかったことや、成長の上で必要な支援の不足が要因となることもあります。
支援とは、身体的な支援・情緒的な支援・認知的な支援の3つからくるもので、普段そばにいてお世話をすることで行えるものが当てはまります。
必要な栄養が足りていないというのは、乳児期だと母乳・ミルクの量、幼児期だと食事の内容や摂取量で判断されます。
それ以外にも、子供が細菌やウイルス性の病気により重篤な症状を起こすことも生理的な要因として挙げられ、特に脳炎や髄膜炎などは脳へのダメージが大きいため、障がいを引き起こす可能性が高くなるのです。
精神障がいは社会性にかかわる障がい
次に精神障がいについてご説明致します。
精神障がいは発達障がいともいい、発達障がいの方が聞きなじみがあるかもしれません。
精神障がいは大きく3つに分類されるので、ひとつずつご紹介します。
自閉症スペクトラム
自閉症という言葉だけは聞いたことがあるという人は多いでしょう。
簡単に言えば、他者とのコミュニケーションを苦手とする、社会性の障がいをいいます。
幼少期は他者を他者として認識していないことがあり、目を合わせようとしても一切目が合わないという子が多くいます。
自分の世界を強く持っているという特徴もあります。
注意欠如多動症(ADHD)
注意欠如多動症は、主に不注意、多動性、衝動性という特徴を強く持つ子をいいます。
耳よりも目で情報を多く取得する傾向が強いため、人の話を聞いている最中でも視線の隅に動くものがあればそちらに注目してしまう、という傾向があるため、「注意力が足りない、集中力が続かない」と見られがちなのです。
他にも、長時間じっとしているのが苦手で、授業中や食事中に席を立ってふらふら歩いてしまう、または走り出してしまう子もいます。
ADHDは自閉症とは違いはっきりと障がいを感じにくいため、集団生活が始まるまで周囲が気付かないことも珍しくありません。
学習障がい(LD)・限局性学習症(SLD)
学習障がいと聞くと「知的障がいのことでは?」と思う方も多いのですが、学習障がいはあくまで精神障がいの一種であり、知的障がいとは違います。
大きな特徴でいえば、文字を文字として認識するのが非常に困難な子が多くいます。
未就学の時点では平仮名のお勉強などをしてもしっかり身につかない子も多いため特に気にならないのですが、小学校に入学してから徐々に学習の恐れが出てくることで発覚することが多いです。
不安に思うことがあれば専門家に聞く
成長のぺースはひとそれぞれであり、たとえ発達がゆっくりさんでも、障がいを持っておらず、一気に急成長する場合もあります。
そのため、上記に当てはまっていたからといってお子様に障がいがあるとは限りません。
心配なことがあれば、専門家に相談してみるのが一番おすすめです。
地域によってはそのまま発達検査をするために手続きに動いてくれることがあり、その検査で今の段階での苦手や得意なことがわかったり、今現在の遅れが意味のある遅れなのか、たまたま遅れているのかがわかることもあります。
「療育」という分野は普段身近なものではないので、足を踏み入れにくい分野と感じるかもしれませんが、不安であれば相談してみると、安心できるかもしれません。
話を聞いてもらうだけでも気が楽になるものなので、まずはお住まいの地域の保健師さんがいるかどうか調べてみるのもおすすめですよ。
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